Web編集者の仕事とはどんなものなのでしょうか? 企業やメディアによってWeb編集者の仕事内容はさまざまです。 でもあえてWeb編集者に共通する特徴を一言で言い表すとしたら。
Web編集者 = コンバージョンするコンテンツを供給し続け、メディアの目的達成に近づける仕事
じゃないでしょうか。
短く言うと 機能するWebコンテンツをつくり続ける仕事 です。 どういうことか、見ていきます。
Web編集者の仕事・役割とは
「機能するWebコンテンツをつくり続ける仕事」と冒頭で述べましたが、 コンテンツ(※1)自体はライターやイラストレーター、漫画家などのクリエイターがつくります。
ではWeb編集者は何をやっているのかというと、以下のような仕事です。
Web編集者の仕事内容
- 企画(構成)を立てる
- クリエイターに発注
- スケジュール管理
- 納品チェック(校閲・校正)
その他にこんな仕事があることも。
▼マーケティング
- 集客 SEO(※2)、EFO(※3)などの対策立案・仕様設計
- 接触媒体や広告・コンテンツ投下計画
- SNS運用
▼サイト設計
- サイトの設計
- ワイヤーフレームの作成
- デザイン・システム開発・コーディングの依頼・ディレクション
- CMS(※4)の導入
▼ライティング
- インタビュー
- テープ起こしを文章化
- リライト
▼その他
- 予算管理
- 広告運用
- コーディング
- CMSへの入力
- その他
すべてを一人で担当できないことも多いので、その場合は社内外のパートナー、クリエイターと一緒に仕事をします。
※1 コンテンツ……Content自体は「中身」の意味なので、動画・音声その他Webサイトに表示できるすべてのものがコンテンツになります。この文章での「コンテンツ」は主に画像+テキストの「記事」のこと。
※2 SEO……Search Engine Optimizationの略。検索エンジン最適化。Googleなどの検索エンジンが評価しやすくするようにコンテンツをうまく設計すること。
※3 EFO……Entry Form Optimizationの略。入力フォーム最適化。サービスの新規登録や資料請求などのエントリーフォームの入力をしやすいように設計すること。せっかくフォームまでアクセスしたのに、入力が面倒くさいとページから離れてしまうのを避けるため。
※4 CMS……Contents Management Systemの略。 コンテンツマネジメントシステムの略。Webサイトを公開するためにはHTML・CSSなどでのコーディングやサーバの設置が必要になりますが、WordpressなどのCMSでは特にコーディングの知識・スキルがなくともWebサイトをつくり、更新しやすくなります。
Webメディアにとって大事なコンバージョンとは?
紙のメディアはコンテンツ自体(書籍・雑誌)で収益を生みます(フリーペーパーなどを除く)。一方でWebは無料が前提なので、コンバージョンしてもらわないことには収益が出ません。
コンバージョン(conversion、CV)とは、もともと「変化」「転換」などの意味です(キリスト教社会では「回心」の意味もありました……そう考えるとすごい言葉ですね)。 Web業界の用語では「成約」「最終的な成果」を表します。
コンバージョンの例
- 商品の購入
- 資料請求
- 広告のクリック
- メルマガ登録
- 求人応募
- アプリ・ソフトのダウンロード
- アンケートへの回答
- 「いいね」ボタンを押す
コンバージョンはWebメディアの収益につながる重要な指標です。
ユーザーが記事を「いいな」と思ったとしても、商品をその場では買わないかもしれません。 でもWebメディアをお気に入りに登録、TwitterやLINEで友だちに紹介、WebメディアのSNSアカウントをフォロー……などアクションしてくれる可能性はあります。 そして何度かWebメディアを訪問するうち、いつかはサービスの登録や商品の購入をするかもしれない。これを「間接コンバージョン」と呼びます。
見込み顧客獲得を目的としたWebサイト・メディアでは、こういった間接コンバージョンをGoogle Analyticsなどの分析ツールで把握することが重要です。
コンバージョンされるコンテンツ=機能するコンテンツ
コンバージョンされるコンテンツとは、「機能するコンテンツ」ではないでしょうか。
「機能するコンテンツ」とは何でしょうか? それは「目的を実現するコンテンツ」です。
メディアにはこういった目的があります。
- 見込み顧客を増やしたい
- 商品・サービスの認知を広げたい
- ユーザーの継続率を上げたい
この目的を実現するのが「機能するコンテンツ」です。1つ1つが、メディアの目的に応じて、こんな要素を持っている必要があります。
- その企業・人ならではの問い・意見を立たせる(主眼)
- 取材してファクトを揃える(理由・根拠)
- 届ける相手を考えてストーリーを伝える(構成)
機能するコンテンツの企画を立て、クオリティをチェックする知識・スキルがWeb編集者には必要です。 テキスト内容だけでなくWebを体系立ててマークアップする「HTML」の知識はSEOとユーザビリティに直結します。
Googleは検索順位の評価指標にページ表示速度などの「Core Web Vitals」を2021年から追加すると発表しています。 Web編集者はテキストのクオリティだけでなく(それはライターの領分でもあるので)Webの技術面にも精通していることが望ましいでしょう。
例えば弊社のWebサイトは自社で静的サイトジェネレータの「Hugo」を用い、AWSを利用して公開されています。 一般的にWebサイト・メディアで用いられることの多いWordpress等と比較したときどれだけの速度が出せるかの実験を自ら行っています。
Webメディアはグロースも必要
無料で見られることが前提のインターネットでは、多くのWebメディアが広告収益で成り立ってきました。
ただネットの広告はユーザーに嫌われがちで、ブラウザの拡張機能・アプリなどで広告がブロック(アドブロック)されたり、直接購入へ誘導するのが難しくなってきている背景があります。
そこで重視されているのが検索エンジンやSNSなどから自らのWebサイト・メディアに集客するコンテンツマーケティングや、サブスクリプションです。
WebのWebサイト・メディアの場合は、自社のプロダクト・サービスに近い興味・関心についてのコンテンツを作成し、SEOや広告誘導で集客、会員登録などを促しメールアドレスを取得して次のマーケティングの段階へ移します(これをリードナーチャリングと呼びます)。
ただいくらコンバージョンできるコンテンツがあったとしても、Webメディアに来る人が少なければ十分な収益が得られないこともあります。 そのため、Webメディアをグロース(成長)させる必要があります。 ※もちろんただPV/UUが伸びる=成長ではなく、メディアの目的にそった成長像があります。
一定の本数、一定のキーワードで、一定の文字数で一定時間に毎日記事を上げ続けるなど、コンバージョンの良かった記事や接触頻度などの成功要因を分析し、サイトや記事構造などの試行錯誤を繰り返します。これを「グロースハック」と呼びますが、Web編集者はWebメディアとコンテンツに特化したグロースハックも仕事のうちです。
Web編集者の役割は拡張する。機能するコンテンツづくりは続く
今まで見てきたように、 Web編集者 = コンバージョンするコンテンツを供給し続け、メディアをグロースさせる仕事 と考えられるのではないでしょうか。 言い換えると 機能するWebコンテンツをつくり続ける仕事 でもあります。
Web編集者の関わる領域はこれからどんどん拡張されていくことでしょう。 集客目的のメディアだけでなく、プロダクト・サービスの中に組み込まれたデジタルコンテンツも数多くあります。
例えば雇用者の健康習慣を支援するサービスThriveGlobal、瞑想アプリheadspaceなどは有料で見られるアプリ内に読みものがあります。顧客が悩みがちな問題のQ&Aなど、コミュニティの帰属意識やサービスの利用頻度を高める目的がありそうです。 またアップルのAppストアの「Today」というメニューは、いろんなテーマでアプリを紹介する記事が毎日更新されます。
こういったコンテンツもWeb編集者の力の見せどころとなっていくでしょう。